HN形成プログラムの提案としてのHCAP

HCAPがIT(information technology)の次の時代を見越した、HN(Human Network)構築のためのプログラムであることは前の文章で述べた。僕らはHNをインフラ(infrastructure)としてみることで、行動主体を構築するため(i.e.プロジェクトをともに行うため)に必要な人間のつながりが形成できる環境が整備されていないことを指摘した。次の世代はHN整備によって発展するものである。
ではHCAPは具体的にどのような形でそれを提供するのか。それはメディコスが日本医療システムの欠陥をビジネスという形で、パッケージとして提案するように、患者学が医者の欠陥を学問という形で提案するように、「言語化し、形式化し、実行に移す」ことでHN構築というものが足りていないことを示すわけである。
前にも述べたように、僕らはHN形成の一番の例として「大学(undergraduate college)」に注目している。ハーバード大学の一番の成功は、ありとあらゆる興味、価値観を持つ生徒がいる中で、それらの生徒が「きづく」ことができる(自分の価値観が変わるような経験をする)ための環境を最大限の努力を尽くして用意すること、と僕は見ている。つまり、人間が成長する上で(成長する、という言葉の曖昧さこそ、教育の難しさをあらわしている)、価値観を成長させる上で、どのような環境を準備すれば、人は学び、反省し、前に進むのか、ということを形式化し、(ハーバードなりの考え方で)実現させている。それは人種の多様性であったり、専攻分野の多様性であったり、教養科目の必修であったり、はたまた、まさに人間つながりの形成であったりする。僕らはこの最後の「人間をつなげる」という目的に特化し、プログラムを実現させる。
今までに「人間をつなげるため」の団体は沢山存在している。アメリカでいえばfraternityという、「兄弟分」つながりの団体がある。これは日本の飲み会サークルに似たもので、とにかくえげつないことを一緒にやることでつながりを深めようというサークルである。ハーバードではその高級バージョンがあり、final’s clubと呼ばれている。卒業生にはFranklin Rooseveltなど、政治力を持った人間がおり、ハーバードも容易に手が出せないほどの権威を誇っている。日本で言えば、まさにサークル、部活、といったものであろう。目的は何かしらあるものの、サークルとは人間関係の団体である、という描写が一番正しいのではないか。
僕らはこういった既存の「仲良くなるためのプログラム」、というものを検討し、何がHN形成にベストであるのか、ということを考えながらHCAPのプログラムを作り上げる。もちろん馬鹿なことを一緒にするべき(i.e.思い出に残るようなことをする)であるのはfraternityやサークルといった活動で育まれる人間関係の濃さや、フォーマルな会議(例えばハーバードが主催するHPAIRといった会議)ではあまり人間関係が構築されないことを考えると、明らかである。このプログラムをより形式化し、言語化して作り上げることで、HCAPにとどまらず、例えばサークル、クラブ活動以外ではあまりHN形成ができていない日本国内において、同様なプログラムを施行することを可能とする。今後、韓国人と日本人、中国人と日本人をそのようなプログラムでつなげ、お互いの理解を促進することも考慮にいれる。プロジェクトベースで仲良くなった(一つの行動主体として一緒に努力した)人間は、価値観、文化の壁を超えつながることができる。まさにHCAPはこういったプログラムの一つ目の提案、テストケースである。
以上のことを踏まえ、われわれの団体の名前を「HNP (Human Network Project)」と呼ぶことを提案する。これは本当の意味でのNPO( Network Producing Organization)であることをここに提言する。