シンプル

 僕の人生は基本的にすごくシンプルです。中三のとき、留学でもするかと決めた際から持ち続けている、僕の信念は、「楽しいことは良いこと。楽しくなけりゃ、やめてまえ。」 とってもわがままな信念ですね。僕はこれに日本人特有の、社会に適応するという技術を付け加えてやってきました。やはり社会に全く適応せずに生きようとするのは危険なことです。無意識であれ、人はみな、多少社会に適応しようとするものです。
 僕はこの信念を今まで多くの人間に話してきた気がします。灘の生徒の前でやった講演もどきのときも、僕は、もっと人生を楽しめと、メッセージを送ったつもりでした。まぁ、まだ20歳の若造が偉そうなのですが。
 今少し考えてみると、中三のとき、僕がこの信念の元に大きな決断を下したような自由を、今では失ってしまった気がします。というよりむしろ僕は今いる状況に満足しているのかもしれません。僕は大学生活というのは四の五の言わずに勉強しなさいという場所だと思い描いていました。まさにそのとおりに、四の五の言わずに僕が大学入学前までに自分自身がセットアップした線路の上を歩いているのだと思います。
 僕が自分のこと、人生のことを最も考えたのは中学のころで、今ではもう考えることも少なくなってしまいました。いや、少なくなった、というより、妙に洗練されただけなのかもしれません。来る日も来る日も、幼馴染と数学、物理ぐらいしか考えることがないですね。それを小説という形で自己表現したり、数学科の友達と議論したり、すごく数学の嫌いな人間に数学の面白さはこういうところにあるんだよと伝える毎日です。こういった僕の考えの根底には、中学のころに考えた哲学が潜んでいるのをよく気付かされます。
 おうくんが色々考えているのをみて、ふと思ったのがこういうことです。僕もおうくんと同じようなことを中学のころに考え、(まさに自分のことを、この世界では本当にちっぽけな一存在でしかないのだという考えから留学という出来事は始まったんです。)至った結論は、「楽しいことは良いこと。楽しくなけりゃ、やめてまえ。」ということなのです。この一文が僕の価値基準の基底をなしているのです。そしてそれを決める過程には僕が卒業文集にかいたようなことがあったわけです。ね。